イングランド銀行を潰した男
このような空売りを仕掛けた根拠としては、ソロスはイギリスの経済力に比して通貨ポンドが政府により無理に高く固定されていると考えていました。
ERMでは加盟国が通貨の変動を基準レートからの枠内に収めなければならないため、金利政策などの自由が制限されます。
イギリス政府は「自国の経済を立て直すためには、金利を下げて輸出を強化したい、だが金利を下げることはできない」というジレンマに陥っていました。
そこにヘッジファンドからの大量のポンド売り注文が入り、基準レートを割り込もうとします。
当然ポンドを統括するイングランド銀行は必至の買い注文で応戦します。
さらに金利を10%から15%に上げ、ポンド買い介入で応戦します。
金利を上げることでポンドを買わせようと試みたのです。
しかし結果としてはイングランド銀行はこの介入に敗れ、イギリスはERMからの撤退を表明し金利も元に戻されました。
ある意味政府機関に市場の力が勝利した歴史的瞬間とも言えます。
「ブラック・ウェンズデー」とも言われたこの一連の出来事はイギリスにとっては経済政策の自由を取り戻すという皮肉な結果となりました。
このときのことについて1992年10月26日の「タイムズ」紙にて、ソロスは以下のように答えています。
「我々のブラックマンデーまでのトータルポジションはほぼ100億ドルの額であった。」 「しかし、我々はそれ以上に売ることを決断した。」 「事実、ノーマン・ラモント(英財務大臣)がポンドを買い支えるため、150億ドルを借りることを価値切り下げの直前に行ったとき、我々はどのくらい空売りすることになるかということを暗に示していたので、楽しんでいた。」
経済政策の自由を取り戻したイギリスはユーロ導入を断念して、経済状態に合わせた金利政策によって1993年より2008年まで長期に渡り失業率の改善・安定経済成長・安定インフレ率を実現しました。
これらのことから一般トレーダーにも重要なことは相場をよく精査することだと思います。
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